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円城 塔さんの小説『チュートリアル』はハードSFをファンタジーのオブラートに包んでヒューマンドラマに仕立てたような作品

こんばんは。オガサワラです。

円城 塔さんの小説『チュートリアル』を読んだので感想とか書きます。

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あらすじと作品紹介

とりあえず先ずあらすじから。

【あらすじ】


「地面から十数センチのところに浮かぶ、透き通った青い結晶。水晶や方解石に似せられることがほとんどだが、濁りのない完全な球体ということもある」――こう描写される「セーブポイント」は類まれな機能を秘めている。どこからともなく現れ、地上に遍在する「セーブポイント」で、人間はその時点までの人生を「セーブ」すると同時に、過去に「セーブ」したどこかの時点を「ロード」で呼び出せば、たちまち保存した状態に戻る。未来の記憶をかすかに抱いたまま、人生を何度もやり直すことができるのだ。

ある街の「セーブポイント」で、「この話の主人公」(男性)と、「また別の話の主人公」(女性)が偶然に出会うところから、物語は始まる。「チュートリアル」と呼ばれる街は、突然生まれたばかりでキャラクターとして初心者の彼女にとって、もってこいの場所だ。ここから二人は、どういう関係を育んでゆくのか? 思索と刺激に満ちた近未来SFの佳編。


【出典:Amazon】

というわけでなんだかファンタジーRPGに登場するクリスタルみたいなものをイメージしちゃいますね。




突然ですが、セーブポイントとはなんでしょう。。。




Wikipediaには、

コンピュータゲームにおいては、プレイを中断する際、現在の進行状態を保存し、次回にプレイするときにその時点から再開できるように処理することをセーブという。主に子どもの間では、この保存されたデータそのものを「セーブ」と呼ぶこともある(「セーブが消えた」など)。

とあります。(ゲームなどのセーブポイント)


セーブポイントはあくまでもゲーム上のシステムですから現実にセーブポイントなんてものが存在する訳もないのですが、そもそも世界というのは、情報の並べ方であり、時間はその並びの変化と捉えるのならば、座標をとってある地点まで戻す(ロード)することは決して不可能ではないのかも知れません。


少なくとも我々がシミュレーションできるくらいに抽象化した世界上、つまりゲームのような仮想世界ならば可能です。


そして我々の世界も実のところ我々よりも高次の存在がシミュレーションできるくらいに抽象化した仮想世界であるならばセーブポイントも実装可能でしょう。


とはいえゲーム上のキャラクターに自由にセーブポイントを作成しロードする権限を与えるとどうなるのでしょうか。


小説『チュートリアル』の登場人物は自分でセーブポイントを作成し自分でロードします。

と、ここまでの説明を読んで小説『チュートリアル』に興味を持たれた方は、ぜひ、読んでみることをおすすめします。


小説『チュートリアル』の感想


シミュレーション仮説というものがあります。


これは我々の生きている世界が実はシミュレーションなのではないかという仮説なのですが、小説『チュートリアル』の主人公が生きる世界もまた何者かによってシミュレーションされた世界の様に描かれています。


とはいえ、シミュレーション仮説をテーマにしたゴリゴリのSF作品という訳でもなく、個人的にはハードSFをセーブポイントといういかにもJRPGっぽいファンタジーなオブラートでくるんで最終的にはヒューマンドラマに仕立てた、と表現するのが適切ではないかと感じました。


とどのつまりハードSF的なテーマを物凄くポップに描くことに成功しているので、万人に気軽におすすめできる小説です。


まとめ

というわけで今回は小説『チュートリアル』の紹介だったり感想だったりを書きました。

余談になりますが、小説『チュートリアル』の表紙は僕の好きなゲーム『塊魂』のアートワークを担当されていたクリハラタカシさんなのでゲーム『塊魂』好きも要チェックです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。